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「透明性とガイドラインの欠如は太陽光セカンダリー市場の成熟を妨げているが、それぞれの企業・団体が力を合わせることで、セカンダリー取引のための強固な基盤を作ることが可能になる」

2018年5月24日-25日に開催された「ソーラーアセットマネジメントアジア」のカンファレンスでは、「日本の太陽光セカンダリー市場」をテーマにしたパネルセッションが行われました。新生銀行の三宅哲史氏、ベーカー&マッケンジーの江口直明氏、ジャパンリニューアブルエナジーの土居聖氏、日本資産評価士協会(JAsia)の若山和夫氏の4名をパネリストに迎え、各社のセカンダリー市場における経験や、市場の現状・将来の展望等についてお話いただきました。

日本における太陽光セカンダリー市場の規模は?

土居氏はセッションにて矢野経済研究所が発行したレポートについて触れました。そのレポートによれば太陽光セカンダリー市場の2017年までの規模はだいたい300MW-450MWで、2020年までには800MWの規模に成長することが予想されています。

(出典:矢野経済研究所 -  https://www.yanoresearch.com/press/press.php/001877 )

(出典:矢野経済研究所 - https://www.yanoresearch.com/press/press.php/001877

ジャパンリニューアブルエナジーの土居氏はセッションにて、実際のマーケット規模は300-450MWよりも大きいのではないかと述べました。日本国内で稼働している太陽光発電所の容量はすでに40GWを超えているにもかかわらず、セカンダリー市場の割合がそのうちの1%未満(300-450MW)というのは少ないというのが、土居氏の意見です。

現在日本では10kw以上を対象とした産業用太陽光発電設備が約90万か所あるといわれており、その中でメガソーラー規模のものは約1万か所あるといわれています。セッションにて司会を務めた慶應義塾大学教員のデイビット・リット氏は、規模が実際より少なく感じる理由として、市場の情報不足、透明性の欠如のが理由であると述べました。現在の市場では、正しい数字を確立することは不可能な状況があります。

太陽光セカンダリー市場の「定義」とは?

太陽光セカンダリー市場の定義は「完成した発電所を売買すること」です。しかし、実際の取引では「完成した発電所」と「権利」の売買はミックスして取引されるのもかなりありると、ベーカー&マッケンジーの江口氏は言います。

新生銀行の三宅氏も同意し、新生銀行が昨年から今年にかけて取り組んできたプロジェクトについて触れ、稼働中のプロジェクトを買収したものは20MWクラスの案件が2件、建設の最終ステージにあるプロジェクトを買収した案件もクローズドしていることから、実際は稼働済みと建設中のものがミックスされているという現状があると述べました。

太陽光セカンダリー市場のキープレーヤーは?

太陽光セカンダリー市場で活躍している企業は、一般的にIPP、金融機関、機関投資家、個人投資家、インフラファンド、アセットマネジメント(資産運用)会社などが挙げられます。しかし市場の拡大と共に、取引に係る詳細な技術や資産価値評価、証券会社を評価するための需要が高まり、EPCやO&M企業も市場に参入してきています。

大企業によるセカンダリー市場への参入も積極的に行われ、パターンエナジー、パシフィコエナジー、カナディアンソーラー、 GSSGソーラー, スパークス、リニューアルジャパンエナジー・インフラストラクチャー・ファンド 、SBエナジー、三菱商事、いちご株式会社、大和グループ、日本アジア投資、ソネディックス等どいった企業などが参入しています。

ベーカー&マッケンジーでは売り手と買い手側の両方にサービスを提供していますが、江口氏によれば、売り手側にも日本の企業が積極的に参入しているとのことです。また最近の新しい変化として、電力会社やガス会社などが買い手として現れているとも述べました。江口氏は買い手側としては外資系の企業を手伝うことが多く、外資系企業が積極的に市場に参入しているといいます。

最近の取引では、米アセットマネジメント企業のパターンエナジーが206MWの再エネポートフォリオ(36MWの太陽光ポートフォリオを含む)取得した例があります。他の主要外資系プレイヤーとしては太陽光発電所を取得するだけでなく開発にも関わるカナディアンソーラーなどがおり、両社とも積極的に日本の太陽光ポートフォリオを拡大しています。

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信頼できる太陽光セカンダリー市場の情報を取得する方法は?

日本での太陽光セカンダリー市場は活発になってきていますが、情報の透明性の欠如が市場の成熟化を妨げている事実があります。経済産業省が公開しているウェブサイトにはプロジェクトやプロジェクトの規模の情報がありますが、情報の公開内容は限られています。所有者や取引の際に必要な情報については得ることが難しく、特に上場していない企業のプロジェクトの場合、情報が圧倒的に不足しています。

完全に情報が開始されている太陽光セカンダリー取引の例(最近のもの):

売り手 買い手 アセットの規模 (MW) 取引価格 詳細 取引時期
カナディアンソーラー カナディアンソーラーインフラ投資法人 30.40 115億 CS大山町発電所(27.3 MW), CS恵那市発電所 (2.1 MW), CS高山市発電所 (1 MW )の3件 2018年9月
n.d.* パシフィコエナジー 36.20 n.d.* 山形県の遊佐太陽光発電所(12.3 MW )と柳井ソーラー発電所(23.9MW)の2件 2018年7月
東京センチュリー 東京ガス 10.00 n.d.* 九州にある2つのプロジェクト 2018年5月
グリーンパワーインベストメント (GPI) パターンエナジー 39.00 n.d.* 富津市(29 MW)と 金城(10 MW) 2018年2月
n.d.* カナディアンソーラーインフラ投資法人 2.60 9億2000万 福島県郡山市(636 kW)と岡山県津山市( 1.9 MW) 2018年1月
リニューアブルジャパン 日本再生可能エネルギーインフラ投資法人 n.d.* 57.8億 8プロジェクト 2018年1月
いちごグループ いちごグリーンインフラ投資法人 (yieldco) 3.60 14.7億 2つの小規模プロジェクト 2017年9月
General Energy Solutions Inc.( 永旺能源(GES)) ASGJ PROJECT2( AMP ) 14.70 n.d.* 福島ソーラーパーク 2017年7月
Neo Solar Power: NSP(新日光), 永旺能源 (GES) カナディアンクリーンエナジー (n.d.*) 14.68 n.d.* 福島県内の太陽光発電所(14.68 MW) 1件 2017年7月
丸紅 SBエナジー & MUL エナジーインベストメント 29.80 n.d.* とまこまい勇払メガソーラー (29.8 MW ) 2017年3月
丸紅 日本アジア投資 82.00 400億 大分プロジェクト 2017年2月
コナジージャパン n.d.* 3.75 n.d.* 三戸太陽光発電所(3.75 MW ) 2017年2月
長谷工コーポレーション 日本ベネックス 3.20 n.d.* 千葉にある2プロジェクト 2016年11月
いちごグループ いちごグリーンインフラ投資法人 (yieldco) 25.80 103億 13プロジェクト 2016年10月
* n.d. = 非公開

現在の太陽光セカンダリー市場における課題とは?

カンファレンスのセッションでは江口氏と三宅氏が実際の取引の際に起こった例などを語りました。(例:売り主が技術的な問題をクリアしないまま売りに出し、技術デューディリジェンスの際に問題が見つかった案件等)

他にも太陽光セカンダリー市場における一般的な課題としては、以下が挙げられます:

  • 完全な取引情報が公開されていない

  • 売り手と買い手の評価の差、価格差が大きい
    売主と買主の間に複数のブローカーが介在することも多く、取引がまとまらない

  • 売主、買主の意向が取引に反映されず、成約までに時間がかかる

  • 投資家が中古の太陽光発電所を購入する場合、デューデリジェンスをしなければ意思決定を下すことができない

(【画像は一般的な仲介サービスと、ソーラークリエート社の仲介サービスを比較したもの】 画像出典:株式会社ソーラークリエート-  http://www.solar-create.com/scheme.html)

(【画像は一般的な仲介サービスと、ソーラークリエート社の仲介サービスを比較したもの】画像出典:株式会社ソーラークリエート- http://www.solar-create.com/scheme.html)

太陽光セカンダリー市場における各企業・団体の取り組み

売り手と買い手の間の期待にギャップが現れてしまう理由として、太陽光発電設備を評価するための標準的な制度が日本にはないことが挙げられました。日本資産評価士協会(JAsia)の若山氏はカンファレンスのセッションにて「機械装置の評価という概念は日本ではまだ確立されていない」と述べ、太陽光発電設備、つまりPV資産を適切に評価する方法を知らず、それをサポートするガイドラインもまだないと述べました。(※)

前で述べたように、日本にはメガソーラー規模の太陽光発電設備が約1万か所、10kW以上の規模の産業用太陽光発電設備は約90万か所存在します。大きなプロジェクトファイナンスを含むものは問題がないことが多いですが、規模が小さいプロジェクトでは

施工上の問題や、プリミティブな問題を起こしているところが出ているのが現状だと若山氏は言いました。

若山氏が所属する日本資産評価士協会(JaSIA)は、日本国内に多く存在する太陽光設備のデファクトとなる資産評価手法と研修プログラムの開発に着手しています。JPEA(日本太陽光発電協会)も最近、「太陽光発電プロジェクト評価ガイド」を発行し、将来の評価のための標準マニュアルとして使用されることを期待しています。

※2018年6月に太陽光発電協会(JPEA)が「太陽光発電事業の評価ガイド」を公開しています。(講演当時は5月)

参考リンク(日経BP):https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atclen/news_en/15mk/071202224/?ST=msbe
参考リンク(株式会社CO2O):http://solar.co2o.com/ja/activity_ja/report_20180702/

小・中規模プロジェクトの太陽光セカンダリー市場

小・中規模プロジェクトの売買においては、太陽光プロジェクトの仲介に特化した企業がいます。主要なウェブサイトは以下です:

  • タイナビ発電所 (Link) / 株式会社グッドフェローズ

  • SOL SELL (Link)

  • メガ発(Link)

  • 太陽光買取.com (Link) / ComPower Inc.

  • クラベール (Link)

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これらの仲介業者は土地の権利とともに太陽光発電所を販売し、「ワンストップサービス」を通じて10%以上の収率を得るという約束を掲げているのが特徴です。ただ、プロジェクトによってはウェブサイトに公開されていないものもあり、メールや対面営業のみで行う仲介業者もいます。

企業が差別化図る中、グッドフェローズが運営する「タイナビ発電所」では興味深いシステムを導入しています。「Webリスク診断評価」というもので、所有している土地付き太陽光発電に潜むリスクを4段階評価で評価できます。Webリスク診断評価では、発電事業者は会員登録(無料)をし、ウェブ上の質問に回答することで発電所に潜むリスクを4段階評価で知ることができます。診断ロジックは資源エネルギー庁が公表した「事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)」を参考にしており、違反している項目やリスクが高いと判断される回答が多いほど、リスク診断評価の結果は低くなります。

参考リンク:https://www.kankyo-business.jp/column/020680.php?page=2
参考リンク:http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1807/02/news019.htm

まとめ

O&Mやアセットマネジメントに関する意識が高まり、太陽光資産の売買(セカンダリー取引)も以前より活発になってきていますが、それと共に問題も浮上してきています。その問題の多くは信頼性の高い情報の欠如と標準化された資産評価方法の欠如が理由です。

また、日本の地理的な問題もあります。日本の自然災害に対する脆弱性はプロジェクトのリスクが高め、特に取引に際してより詳細なデューデリジェンスと評価が必要になります。取引プロセスをスムーズにするためには、売り手はプロジェクトの建設から運営まで、関連するすべてのデータと契約を開示する必要があります。

太陽光セカンダリー市場の成熟に向けて各団体が支援指針を作成し、不十分に設計されたプロジェクトを排除し、健康的な太陽資産の売買のための透明な市場を創出するためのイニシアティブが進行中です。様々な団体・企業が力を合わせることにより、健全な太陽光セカンダリー市場が作られてくことを期待できるでしょう。



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